2020.10.30 K課長(現在籍・研究課)
前任者が研究していた閉鎖型苗について、本格導入されたら、研究レベルと実際の商品としての苗質に大きな違いがあり、お客様から多くのクレームが来ました。(当初は「閉鎖型空間で育苗するのでトマトの第一花房が低くなります」と営業していた…。)
前任者の代わりに、施設導入後からの育苗研究担当者となりましたが、閉鎖型での育苗試験を進めつつ、各エリア担当の営業に同行し、北海道から九州までクレーム対応&問題点の聞き取りに回ることから仕事が始まりました。
無農薬をうたう閉鎖型育苗のため、花芽を低段に付けるためにホルモン剤等の農薬は使用することができず、育苗環境の調整だけで花芽を低段につけることは大変でした。また、低段につける条件がみえてきた段階で、乱形果や第二花房の段とびなどの問題も発生し、農家さんまわりは続きました。
加えて、花芽を低段につけるためには、当初会社決定されていた小容量培地での規格では不可能であり、育苗コスト上昇が必須となり培地容量の多いセルトレイの使用を許可してもらうため試験を繰り返し、月一回の会議で結果を提出し続けました。
閉鎖型育苗中での花芽分化をさせるため、超多肥の育苗方法を採択している期間がありました。2次育苗農場から、苗が柔らかすぎて枯死するものが多いというクレームが来ていましたが、『花芽を低段につける』という自分の課題(いま思えばつまらないプライド)を捨てきれず、2次農場の意見を受け入れて閉鎖型1次育苗方法を改善することができませんでした。苗質が改善されないため、長野農場に呼ばれ、実際に自分が閉鎖型苗の植込み~2次育苗を体験することで、このままの1次育苗ではいけないことを痛感しました。また、その際に山下農場長から言われた言葉は、私が仕事をする中で、心にささっている言葉となっています。
『自分の仕事に誇りをもつことはとても良いことだが、だからこそ、「でも」や「だって」と相手の意見を最初から否定するのではなく、まずは人の意見を受け入れてみて行動し、そのうえでも自分の意見が正しいと思ったら相手にもう一度伝えなさい。』
とはいっても、いまだに「でも」って多く使っていて、こっそり反省しています。
閉鎖型苗は、まだまだ100%の完成形ではないと思っています。また、新しい品種がどんどん出てくることにより、数年前の育苗条件では、求める苗質と理想との乖離がでてきていると感じています。品種(種子)の特性が多様化しており、これまで以上に結果を出すのが難しくなってきていますが、閉鎖型育苗環境のブラッシュアップを図っていきたいと思います。
また、例えば育苗閑散期の注文では、特注の育苗環境を作るなどの限定育苗キャンペーンなどもできれば面白いなと考えています。
育苗環境をコントロールすることが可能なので、頭をやわらかく考えることで、もっと可能性が広がる苗だと思います。そこに農家さんの知恵も加えていただければ、より面白いことができる気がしています。現状に甘んじず、改善を続けていきたいです。