2020.10.30 S係長(現在籍・茨城農場)
当初ツイン苗としては販売していたのは定植用の苗として本葉の脇芽から2本分側枝を出し、1株が2本分として扱える苗でした。その中で閉鎖型を利用したツイン苗は子葉から2本分の側枝を出した商品開発をすることとなりました。
最初はコツさえつかめば大丈夫だろうと、甘く考えておりましたが実際に試験を開始してみると苦労と失敗の連続でした。
一番の悩みは脇芽の揃いを揃えることでした。通常のツイン苗も脇芽が揃っていなければ商品規格として認められず、生産者様からも指摘をよく受けておりました。
そのためまず着手したのが、閉鎖型特有の強ストレス環境下を利用した、脇芽を揃える方法でした。環境を細かく調節できるような施設ではないので、棚の前にネットを垂らして風を弱くしたり、蛍光灯を部分的に外すことで光の量を調節したり、液肥のECや与えるタイミングを細かく調整したりと常に工夫の連続でした。
ある程度、レシピが出来上がったところで次にぶつかった点が品種によって仕上がるサイズが異なる点でした。
トマトはトマトでも大玉トマトやミニトマトによって生育の仕方が異なります。同じように作っても同じサイズにはならず、1つのレシピでは全ての品種をカバーできる状況ではありませんでした。その為、品種別での特性を把握するため、細かく試験を繰り返し膨大なデータを蓄積しながら研究を進めました。
また、お客様ごとで好まれるサイズが異なるたびに、試験を繰り返す。まさに出口の見えない状況でした。
脇芽が揃えられるようになったと思いきや、次はどこまでを出荷基準とするかが焦点となりました。その為、実測と目視でどの程度差異が出るかを調査するため、1本ずつ目視で判断した後に、定規を使用して脇芽の長さを計るなど、かなりの手間と時間が掛かりました。
また、試験では実生と接木を並行して行っていたのですが、会社から優先順位として実生の結果を先に出すよう言われていたのにも関わらず、接木の試験を先行して実施し、実生規格の結果が後回しとなったことについて怒られたこともありました。
そして、実際に注文分として生産を開始し始めたのですが、試験の時には気付いていなかった点が発覚しました。試験はほぼ自分一人で作業を行っていましたが、実際の注文では複数人で作業を行うため、作業者によって仕上がる品質が異なり、予定されていた数量を納品できない事象が発生してしまいました。本当に悩みが尽きない研究でした。
現在ではツイン苗はたくさんの生産者様に利用いただける規格となりました。ツイン苗は1株で2本分としての機能があるため、定植本数が半分になり、種苗コストも削減できる一石二鳥の規格苗です。
ただ、トマトについては毎年新しい品種が開発されており、我々も毎年新しい品種が出るたびに試験を繰り返し、安定してツイン苗を供給できる体制を整えております。
まだまだ脇芽の揃いの点について課題は残っておりますが、たくさんの生産者様にこれからも利用し続けられるよう改善出来ていければと思っております。そして、これからもベルグアースのツイン苗買って良かったと思っていただける、商品づくりを続けていきたいです。