農家の息子として生まれたけれど、農家を継ぐことが嫌だった。一生懸命働いても儲からないことを知っていたから。でも、認めたくない気持ちもあった。「食べ物を作る農家が食べていくことが難しい」、そんな世の中はおかしいと思っていた。
農業高校を卒業後、電照菊などの花卉栽培をはじめました。しかし、事業は安定せず、25歳のとき、野菜苗作りへの事業を一大転換しました。その後も試行錯誤と失敗の繰り返しでしたが、「農業でもやっていけるんや」という思いを胸に、野菜苗事業を全国規模まで拡大することができました。おかげさまで、農業分野では数少ない上場企業となりました。
コア事業である育苗事業も、生産者がなかなか作れないような品質の苗を作る、生産者の時間を創出するといった意味では、農業に貢献できていると考えています。
しかし、まだまだ農業は厳しい現実の中にあります。青果物販売価格の低迷、気候変動による不作、新たな病害虫による作物被害、人手不足など様々な問題が日々生産者を苦しめています。
情報・通信技術の発展により、社会は目まぐるしく変化していますが、生物や気候を相手にする農業においては、他の業界ほど、機械化やIT技術の導入も進んでいないように思えます。
この現実を変えていくためには、若い力が必要です。ベルグアースに入って、ベルグアースを変える、そのことが結果として、日本の農業を変える、世界の農業を変える、そして世の中を変える、そんな気持ちをもった人が今の農業界には必要です。
世界の食と暮らしを豊かにする、それをやろうと思う人たち、おいで!
「苗」と聞けば、多くの方がホームセンターのガーデニングコーナーに陳列されている花や野菜のポット苗を思い浮かべると思います。しかし、「苗ってどんなもの?」と聞かれて答えられる方は意外と少ないのではないでしょうか。
「苗」とは、種を播いてから、畑に植えられるようになるまでの若い植物体のことを言います。苗を理解する上では、よくヒトが例にされます。
生まれたばかりの新生児を一人、社会の荒波にさらすと大変なことになります。保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校と年齢毎に「適切な環境」を提供することで、ヒトは立派な大人になっていきます。
では、年齢毎の「適切な環境」とはどのようなものでしょうか。ヒトの場合は、食事・睡眠・運動をベースに、体や脳の成長ステージにあわせて、勉強や部活動、人間関係、遊びを経験し、刺激とストレスを受けながら、社会で生きていくための力が育まれます。
植物も同じです。種を直接畑に播き、いきなり厳しい環境にさらすよりも、「適切な環境」で育て、徐々に外の環境に慣らしてあげる必要があります。
植物の場合は、水・肥料・光合成・呼吸をベースに、生育ステージにあったレベルの日射量・温度・湿度条件の中で、適度なストレスを受けながら生長することで、畑の環境に耐え、大きな実りをもたらす植物体となります。
農業界には「苗半作」という言葉があります。苗作りが終われば、その作は半分終わったようなものという意味です。
ヒトの場合、成人するまでに身に付けた「体力・知力・思考力・社交性・価値観」といったものが、その後の人生に大きく影響を与えますが、植物においても苗の状態が、畑に植えてからの生育に大きな影響をもたらします。
葉・茎・根が充実しており、ストレスに耐えてきた「良い苗」は、畑に植えた後も素早く根付き、力強く生長していきます。
すなわち、苗作り(育苗)は、栽培全体を通して非常に重要な工程ということです。
しかしながら、栽培全体の中で、「苗の質」というものは非常に大切であるにも関わらず、「良い苗」を作ることは難しいです。種子の品質、品種特性、植物生理、その時期の環境条件、これらを全て理解しながら、瞬間瞬間で、「最適な環境」を提供する必要があります。「最適な環境」とは植物にとって快適な環境という意味ではなく、畑で活躍できる「良い苗」にするために必要な環境という意味です。その定義も植物の生育ステージや品目・品種によって異なるため、苗作りには非常に高度な知識と経験、技術が必要になります。そして何より、多大な手間と失敗したときのリスクが常につきまとってきます。
また、苗の中でも、特に手間と技術が必要なものが「接ぎ木苗」です。接ぎ木苗とは、異なる品種(ときには品目)を物理的につなぎ合わせた苗のことです。一般的に野菜は土で栽培されます。土には、虫、細菌、真菌など植物の生育を脅かす生物が沢山います。それらの生物による生育不良を防ぎながら美味しい実を収穫するための技術として「接ぎ木」が存在します。
果実の品質に優れる品種(穂木)と耐病性に優れる品種(台木)をつなぎ合わせ、双方の強みを持った苗を作ります。
また、病気を防ぐ以外にも接ぎ木の効果があります。穂木よりも水や肥料の吸収力に優れた台木を接ぎ木することで、収量を高めることができます。キュウリにおいては、農薬と誤解されるブルーム(果実に付着する白い粉:ケイ素を主成分とする)の発生を防ぐために、土からケイ素を吸収しにくい台木を使用しております。
このように、特に果菜類(トマト、ナス、キュウリ、スイカ、メロンなど)では、様々な理由から、接ぎ木苗を使用することが一般的になっております。
かつては基本的に生産者が自身で苗を仕立てており、接ぎ木作業も各生産者の家庭で行われておりました。毎年、どこかの生産者が苗作りを失敗してしまう中で、苗作りに必要な高度な技術力を持って、他者の苗も作って販売しようと考える生産者が現れました。同時に、自分が作るよりも上手な人に作ってもらったものを購入するほうが良いと考える生産者も増えてきました。こうして、青果物ではなく、苗を専門に栽培する農家が、各地域に根ざすようになり、そこから苗メーカー(苗業者)が生まれました。
苗メーカーは生産者の代わりに育苗します。生産者にとって苗は、栽培のスタートラインでもありその年の収穫量にも直結します。それだけ苗メーカーの役割は大変重要となります。
生産者が求める高品質な苗を安定供給し続けるために、どの苗メーカーも独自の育苗技術を磨くことはもちろん、専門的な設備を導入するなど、日々切磋琢磨しています。
また、苗メーカーは商品だけでなく、生産者の育苗時間を担うことで、生産者へ貴重な時間も提供しています。
現在は、大部分の果菜類生産者が、苗メーカーの作った購入苗を利用しています。苗メーカーの存在は社会にとって、ますます重要なものとなっています。
苗を育てる“技能者”。
元来、苗の品質はその人の能力、感性によるところが大きいです。それがありすぎると、お客様に対して違いすぎる苗を納品せざるを得ない状況になってしまいます。そうなるとダメですよね。 とはいいながら、技術者の力に頼りすぎると、各技術者の個性が苗に色濃く表れ、商品としての均質性が損なわれてしまいます。
栽培管理者がまずやるべきことは、こういう苗に仕上げよう、を思い描き、共有すること。現場での栽培を補助している生産管理部門、それを販売している営業部門も含めて、こういう苗にする!という強いイメージをもっと共有できて、はっきりすれば、理想に近づける苗が作れるはずです!!
栽培管理者自体が哲学的な職と言えます。理想の苗を求める強い気持ちと同じくらい、苗に対する優しい心を持つ必要があります。
一言で言いたいけど言えない!そんな奥の深い仕事が栽培管理者です。社長の理想は、優しい気持ちと強い心を持った人です!